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第25回:『復活!「コンサルに聞く!」シリーズ:小京都の宿<旅籠ほりかわ>の場合』

 

皆様こんにちは。

さて、前回に続き、復活シリーズ「ホテルコンサルタントに聞く!」、今回は、大手ホテルから小規模宿の運営管理まで、豊富な経歴を持つ「コンサルタント:徳川」が担当する 小京都の宿<旅籠ほりかわ>様のお話です。

 

小京都と呼ばれる、とある城下町。

桜や紅葉のシーズン、季節のイベント時はもちろん、歴女(この呼称は死語だろうか…)や神社仏閣マニア、SNSに映える町並み散策を目的に、一年を通して観光客が訪れる。

由緒ある古刹や、風情を残しつつ整備された水辺の遊歩道に隣接し、一部の客室からはその景色を臨める。

 

明治初期の創業から百数十年を数える老舗で、十数年前のリニューアルを機に、現社長に代替わり。

女将さんと、支配人や板長を含めた5名の正社員、近隣の学生や技能実習生などのアルバイト、パートスタッフが数名。

温泉なし、露天のある内湯大浴場が男女別に2か所と、貸切できる家族風呂が1つ。

 

客室は、10~12畳の和室(一部バス無)と、ツインベッドの洋室、2間続きの和洋室。

和洋室のうち1室は露天付、1室はバリアフリー対応。以上で35室。ほかに中庭を挟んで団体専用の別棟がある。

夕朝食とも、「おくどさん」を設えたオープンキッチンのダイニングにて提供。

周辺には、同クラスの旅館、一棟貸の古民家やゲストハウス、最寄り駅を中心に、大手シティホテル、全国にチェーン展開するビジネスホテル等、多種多様な競合宿が林立する。

 

徳川が担当についた当時、旅籠ほりかわ様のご主人は、とある問題に頭を抱えていました。

「バイトさんが一気に辞めちゃってね。募集は続けているけど、応募もそうそうなくて追いつかない」

学生さんのアルバイトにありがちですが、現職の〇〇君の紹介で、大学の同級生△△くんと□□さんに来てもらうことになりました…が、やがて就活だ卒論だと一斉に退職…まさにそのパターン…

観光地だけに、人員の争奪戦もしばしば。

 

あと数か月もすればハイシーズンを迎えるころ。

徳川は、「NBSチェックリスト200」片手にご主人と緊急協議を行い、まずは目前のハイシーズンついて、

・当該期間の売上目標を設定する

・当該期間を限られたマンパワーで乗り切るため、稼働率や人泊数を抑えつつ目標額を達成する

という戦略のもと、

・販売単価を上げる:料理単価の高いプラン、グループサイズUPの販売強化:[Check No2]  

・チェックイン/アウト回数、清掃回数を減らす:連泊プランを新設、優先的に取る:[Check No44] [Check No53] etc

という戦術を試みました。

 

かくして、ピーク日は満室かつ売上目標を達成して、件のハイシーズンを乗り越えることができた旅籠ほりかわ様。

次の繁忙期に備え、遅れていたPMSの導入と、正社員の採用を決めて、マンパワーの削減と安定を目指しています。

 

その後、ショルダーからオフシーズンに入っても、旅行支援の効果もあって、まずまずの集客が続いていました。

新入社員たちが戦力になり始めたころ、今年度の[Check No65] 広告宣伝費[Check No66] 販売促進費の検証を行ったところ、思った通り、人員不足により積極的な宣伝、販促を控えていたため、予算に余裕があることが判明しました。

ある程度のボリュームで、OTA各社のクーポン等の企画に乗ったり、広告も打てそうです。

せっかくお金をかけるわけですから、しっかりとリターンを得られるよう、まずは改めて[Check No20] 自社施設の強みと弱みを把握できているか、旅籠ほりかわ様の「魅力の棚卸し」を行ってみましょう。

 

競合は、駅周辺のシティホテルと、築浅めのお洒落系ビジネスホテル、隣接する同規模の旅館と据えます。

 

・駐車場無料

 駅近のホテルは駐車場がないか、あっても当然有料。周辺の旅館も、駐車できる台数が限られているためほとんどが有料。

対して当館は、別棟の方にも駐車スペースがあり、台数にも余裕がある。

・「おくどさん」のごはん

 駅前のシティホテルには、オープンキッチンのレストランがあるようだが、ブッフェスタイルだし。

隣の宿は部屋食をウリにしているが、ダイニングだからこそ、熱いものは熱く、冷たいものは冷たいまま、より良い状態で提供できる。

そもそも、「おくどさん」があるのはこの地域で当館だけだ。

 

ほかにも、「客室からの眺望」とか「野鳥が飛来する中庭」とか、旅籠ほりかわ様の魅力を再確認できました。

早速これらに沿って、[Check No35] プラン内容(施設紹介文など)は、セールスポイントを記載しアピールできているか[Check No42] 画像は訴求力のあるものが登録されているかをチェック、手直ししていきましょう。

 

そのとき、「この地域全体の課題だと思うんだけどね」と、ふとご主人が吐露されました。

公共交通機関の利便性が向上したり、高速道路網の整備が進むと、東京や大阪のような大都市が拠点になり、地方は、宿泊を伴わない日帰り観光地になりがちだ、うちも既にその傾向が現れている、と。

 

仰る通り、競合は、駅前のホテルや隣の旅館だけではないですよね。

「NBSチェックリスト200」では、販売戦略を立てる際、[Check No10] 競合3施設の設定を推奨していますが、同一エリアのみならず、より広範囲に、それぞれ3社ずつの競合を設定するべきかもしれません。

では、最寄りの空港近くのシティホテルと、空港からこの地域と同程度の距離にある歴史ある温泉地の宿、同じ小京都にある老舗旅館、この3軒を競合と据えてみましょうか。

 

例えば以下のような旅行者が、旅籠ほりかわ様に「泊まりたくなる」ようにするには何が必要でしょう…?

・北海道在住で、初めて当該エリアを訪れようと検討している女性グループ

・東京在住のご夫婦。定年退職して、趣味の旅行を楽しんでいる

・欧州から、初めて日本旅行するファミリー。まずは東京を拠点にと考えているが、日本ならではの情緒ある宿にも泊まってみたい

 

先に再確認した「魅力」のほかにも、彼らには郷土料理だったり、伝統工芸の工房見学や体験なんかも響きそうです。

アクセス面でも優劣がありますね…やはり駐車場無料はアピールになりそうだ。

まだまだ、打ち手は無限にあるぞ…と、一層、気合の入った徳川と旅籠ほりかわ様のお話の続きは、また後日。

 

 

好評いただきました『ホテルコンサルタントに聞く!』シリーズは、次回からパワーアップして別シリーズでお届け予定です。より皆さんの参考になるような記事をお届けしたいと思っておりますので、ぜひご期待ください!

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